コロナ禍の子どもたちと学校

コロナ禍の子どもたちについて講演や原稿を依頼されることが多くあります。その中でも学校については、書いているうちにやっとまとまってきました。今私が考えている骨子を以下に書いておきます。長くなります。
>コロナ禍の子どもたちと学校
新型コロナによる休校は、子どもたちには何の情報提供もなく、意見も聞かれることもなく、学ぶ権利や遊んだり、文化に触れる権利を奪われたということです。この権利はく奪を子どもがしっかりと把握することなしに、一人の市民として自分の権利を認識することはできないでしょう。「学校は、自分や家族が元気であれば行くべき所」であったものが、そうではないということを子どもたちは知ってしまったのです。だとしたら、休校解除後の学校は「行きたい所かどうか?」が問われる場になったと言ってもいいでしょう。
しかし、その自覚が学校側にあるでしょうか?休校が解除された後の学校では、集団活動、他県への遠出や保護者が集まる行事は中止され、日常生活でも三密を避けるためのマスクやフェイスシールド、机ごとのシールドや消毒など、異様な風景の中での日常が始まりました。これは子どもたちにとってストレスフルな日常が展開されたということではないでしょうか。
休校中の生活や考えたこと、困ったことや嬉しかったことを交流し、そこから学ぶべきことを子ども自身が見出すプロセスこそ、学校再開後するべきことであったのに、子どもたちには学習指導要領の完全実施を優先した授業がなされ、さらに理解の格差を広げました。授業についていけない子どもにも出番があった運動会やお楽しみ会などは中止され、早く帰ってゲームをすることで自らの自尊感情を取り戻さざるを得ない状況になったと言えるでしょう。
手段に過ぎない「三密を避ける」が、まるで目的のように言われ、専門家から言われる「感染予防に必要な行動」と必ずしも一致しないことが声高に言われることもあります。
屋外に出ることは決して禁じられていないのに、風が通る屋外でさえマスクをしていないことを責められるような風潮が、子どもたちが屋内のメディアに漬かる土壌になりました。つまり、このコロナ禍の中でメディア依存を作ったのは大人たちの受動的な体質であって、子ども自身ではないということです。
新型コロナ禍の後遺症として、メディア依存のほかにどのようなことが考えられるでしょう?メディア依存や不登校は、見える現象としてありますが、子どもたちの中に、ひょっとしたら教師の中にも、「前向きになれない」「楽しいと感じられない」「投げやりになる」「未来を描けない」というような、うつ傾向が蔓延しているのではないかと思われます。
年度の終わりに向けて、あるいは卒業に向けて、あるいは入学に向けて、いろいろな計画があった3月だったろうと思います。それが理由もわからないまま無残にも霧散した時、子どもたちは大きな喪失感に、動けなくなった状態ではなかったかと思います。その気持ちを共有したり、話し合ったり、言いあったりする友達との会話すら持てない状況が続いた子どもも少なくなかったでしょう。家に閉じこもったまま誰とも会えないのはかわいそうだとスマホを買い与え、その結果メディア依存になってしまった子どももいるかもしれないと思います。
そして、そのような落胆がいつの間にか消化されずに心の奥に沈んだ時、表には「前向きになれない、投げやりな自分」が出てきます。それはその子のせいではありません。そして、いくら叱咤激励したところで、回復するのは難しいのでしょう。
そして、子どもたちが楽しみにしていた様々なイベントが縮小されたり、中止されたりした結果、何も楽しいと思えない、感じられない感情の平板化も起こっています。これも、子どもたちのせいではありません。
表には出てこないかもしれませんが、自殺念慮やリスカも増えていると聞きます。これらは、新型コロナが私たちに教えてくれた事柄をしっかり見直すことでしか回復はあり得ないのですが、学校現場は「もう後ろは見ないで前を向こう」「コロナのことは、思い出すな」という掛け声がかかっているかのように見えます。それでは、トラウマはますます沈殿し、その人の心の奥深くからその人を蝕み続けることになるでしょう。
新型コロナによる休校とは何だったのか?そこで見えてきたもの、そこから自分たちが学んだことは何だったのかを、しっかり振り返る時間を早く持ってほしいと思います。新型コロナの自粛が解かれた今だからこそ、子どもたちとともに学べることがあるはずです。
休校中、もっと何がしたかったか?何ができたと思うか?を話し合ってみてください。休校で楽しかったことや、辛かったことを出し合い、それを解決・実現できるかを話し合っておきましょう。
また、休校中学校が始まったら何を一番したいと思ったかを出し合ってみましょう。それこそが、子どもが学校に求めているもののはずです。そしてそれは満たされたのかを、どうすれば満たせるのかを一緒に考えることが出発ではないでしょうか。

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20年を経て ~教え子からもらう宝物~

もう20年近く前の卒業生が、ある施設の施設長になって福岡に戻ってきた。
そこに4月から勤めた保育士が、たまたまぷろほの講座を受けていて、今日受講後に私に話しかけた。

「先生、わたし施設の本の係になって購入するようにと施設長に言われたのですが、施設長が「版画の のはらうた」を入れるようにと最後に言ったんですよね。私知らなくて、ネットで検索しても「のはらうた」は普通の詩集しか出てこなくて、「版画の」と施設長が言ったのが、どれか分からないのですが、山田先生に聞けばわかるかなと・・・」
もちろんぷろほには数冊の「版画のはらうた」があるから、紹介して「読んでみて?」と貸したが、施設長の彼が絵本の担当者に「版画のはらうた」を指定したことが、なんとも嬉しい!

実は彼が(4年制大学を卒業後に保育士を目指して)、私が勤める短大に入ってきた(20年近く前の)1年生の前期、私の「ことば」の授業の副読本は「版画のはらうた」だった。
そして、その中から1つの詩を選んでその主人公になった気持ちで朗読するのが中間試験だった。彼はそれを覚えていて、その施設にくる子どもたちに、読んでその世界を感じとってほしいと願ってくれたのだ!

そして彼は1年で自分の生きる道を見つけて退学しているので1年しか付き合いはないのだが、その短い期間の出会いでも、彼は私が授業で使った本を、自分の施設に置こうとしてくれている!

私は「版画のはらうたⅠ~Ⅲ」に加えて、「ひとくち童話」「おはよう童話」「きもちのキセキ」を紹介して、その施設に来る子どもたちに、温かい世界もあるよ・自分を信じていいよと伝えたいと願った。

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子どもと保育研究所ぷろほ 春期 開始

2020年度の春期は、新型コロナの緊急事態宣言下、幸いにも(?)少人数で、広さも規定以下であるため自粛対象にはならず、それでも手洗いや換気を十分にしながらの開講となりました。
遠くは宮城からの受講生もいて、作業療法士の方の全科目受講もあり、様々なニーズをもって参加しておられる様子に身が引き締まります。
7月まで、水曜日休みで(この日に園見学など行きます)土日も講座があるハードスケジュール。
疲れをためずに乗り切りましょう!

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「保育心理演習」という講座

この講座は、「相手の立場に立つ」ということを演習としてトレーニングすることを目的としています。「相手の立場に立つ」とは、保育者としていやになるくらい聞いている言葉だと思います。しかし、「相手の立場に立つ練習」をしたことはあるでしょうか?

例えば、野球で「ヒットを打つことは大事」だと言われて、「そうだ!」と思っても練習をしなくては、ヒットは打てません。野球のコーチが「ヒットを打つことが大事」というだけでなく、「ヒットを打つにはどうしたらいいのか?」「どんな練習をしたらヒットが打てるようになるのか」を指導しなくては、コーチと言えないでしょう。
野球のコーチだったら、「ヒットを打つにはボールをよく見て、バットの芯をボールに当てて、バットを思いきり振り切る」などと教えるかもしれません。さらには「ボールをよく見る動体視力をつける練習」「バットの芯に当てるバッティング練習」「バットを振り切るスィングの練習」と練習方法を指導するでしょう。

しかし、保育者養成に関わる方の中に、「子どもの立場に立つことが大事だ」としか言わず、「どのようなことが『子どもの立場に立つ』ことなのか」「どんな練習をしたら『子どもの立場に立てる』ようになるのか」を指導しない方は意外に多いのではないでしょうか。
子どもの立場に立つには、何が必要で、どのようなトレーニングによってその力はつくのかを提起し、子どもの立場に立てる保育者の養成に一歩近づきたいと思います。

一方で、相手の立場に立つということは、そう簡単なことではないことも心しておかなければなりません。
相手の立場に立つということは、自分のそれまでの生き方と異なる価値観を受け入れることであり、それはとても危険なことでもあり、怖いことと感じます。しかも、同じ事を体験しても人が違えば、受け取り方は違うのです。そっくり同じ事は体験できないなら、何で補ったらいいのでしょう。そこには、自分をその立場において、自分のこととして考える想像力が必要になります。
ここで、なるほどと思ってすぐにできる人はいません。どうすればいいかがわかっても、練習せずにヒットが打てる人はいないのです。
この講座では、その練習方法を提示します。最初からうまくはいきません。最初からヒットは打てない(まぐれ当たりはありますが)のと同じです。相手の立場に立った関わりができずに落ち込んで、失敗しながらも毎日練習を続ければ、1か月後には少しは相手の立場に立った応答ができる(ヒットが打てる)かもしれませんが、分かったつもりになって練習を止めてしまえば1か月後もヒットは打てないでしょう。さあ、やってみましょう。

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新型コロナの渦中で思うこと

先日の西日本新聞にも紹介されましたが、新型コロナの渦中で私が思うことを以下に添付します。
「好きなことばかりやるな」と言われてきた日本の子どもたちに、自分の「好き」を見つけるチャンスになればいいなと思っています。
(子どもとメディアのHPにも同様の文章を掲載しています。)

<こどもたちへ>
突然(とつぜん)の休校(きゅうこう)にびっくりしましたね。学年(がくねん)の終(お)わりと始まりが休みになって、戸惑ったり、友達や先生と会えなくてさびしかったりした人もいるでしょう。

ずっと家にいると時間もたっぷりあって退屈していませんか?でも、いままで「やりたかったけどなかなかできなかったこと」ってありませんか?
「段(だん)ボール迷路を家の中に作る」「お菓子やケーキを作る」「全〇巻(ぜん  かん)の本(漫画)を読破する」「ハリーポッターの映画を全部観る」「聞いたこともないような音楽を聴く」など、やりたいことをぜひやってみてください。
「星のこと」「虫のこと」「海のこと」「町の歴史」「ロボットの仕組み」など、テレビ局や会社が、科学や歴史、学習をサポートするようなサイトを立ち上げて(たちあげて)います。自分の好きなことをより深く学んでみたり、いままで全く知らなかった世界に触れてみたりする絶好の機会でもあります。
皆さんは今、自分の「好き」を追求するチャンスと新しい世界を開く機会をもらったのです。ぜひ、たっぷりと時間を使って、自分の「好き」を見つけてください。

<おとなたちへ>
人類という種は、子どもが育つには、人と触れ合うこと、手をとりあうこと、語り合うことが必要な生き物としてこの地球上に誕生しています。でも、いま新型コロナがこれらの大きな部分を奪っています。つまり、ヒトが人間として育つための重要な要素のいくつかが、今、子どもたちから奪われているということの重さを、親や教師は意識しなければならないと思います。
そして、それを取り戻せるのは何時で、どのような場所・環境なのかを考えることが求められています。例えば、子どもたちの体重の異常な増加も報告され始めています。ですから、可能な限り、学校や部屋の中というようなスペースではなく、山や川、広場などの自然の中で、子どもたちの体験を展開していかねばならないと思います。今こそ大人たちが知恵を出し合って、そのような場を作る準備をしてほしいのです。
教師は、教師になった初心を思い出しましょう。本来の教師としての役割、子どもたちと関わることが好きだったのに今それができないつらさは、子どもたちとのかかわりが復活した時に、元の日常に戻ることでは取り戻せません。休校になる前の学校に戻るのではなく、もっと教師と子どもが近く関わりあえる学校になるための重要なジャンピングボードにいると意識してください。今、子どもたちと一番したいことは何でしょう?それができる学校にするチャンスだと思います。
子どもたちに出す宿題は「学校が毎日あったらできないこと、時間がかかってもあなたが好きなことをやる」でいいのではないでしょうか?学校が再開されて子どもたちが楽しかったことを報告するときのキラキラした目を想像してください。

親たちは、子どもと一緒に、特に何かしなければならないことも出掛けることもなく、こんなに長時間過ごしたことはないかもしれません。子どものいけない所やダメなところは一瞬で見つけられますが、いいところを見つけるには時間がかかります。
一緒に遊んであげなくてもいいのです。スマホやパソコンから目を離し、ただ、子どものしていることに興味をもって見守ってください。また、散歩する、料理をつくる、部屋の模様替えをするなど普段できないことに一緒にチャレンジしてみませんか?
「うちの子はこんなことが好きなのか」「こんな目をして、本を読むんだ」「こんな言葉を知っているんだな」など、子どものいいところを探してみませんか?

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好きなことばかりやっていいよ

新年度が始まりました。2019年度、まもなく令和の時代も、子どもと保育研究所ぷろほ よろしくお願いいたします。ぷろほの所長以外に、子どもたちの苦しい胸の内を聞く仕事をしていますが、最近考えていることを年度の初めにお話ししましょう。

よく学校の先生や大人(親)は言います。「社会に出たら、もっと苦しいことはたくさんあるんだから、好きなことばかりはできないんだから、楽に流されず、今のうちに頑張る力をつけておくように」・・・
すると、子どもは大人になるのが嫌になり、今を楽しめなくなり、今のうちに死んだ方がいいと思うようになるのです。

本当に大人たちは苦しい嫌なことばかりやっているのでしょうか?先生は、教育が嫌いだけどやっているのでしょうか?
苦しいことがあっても何とかやれるのは、その中に楽しみや好きなことがあるからだし、好きだからこそ困難でもやってみようという力が湧いてくるのではないでしょうか?
「好きなことばかりやらずに・・・」と大人は言いますが、子ども時代に好きなことを気が済むまでやった人の大人になった羨ましいほどの姿に、出会ってはいないでしょうか?
「好きなことを思い切りやって、やがてそれが社会と繋がるにはどうしたらいいか?」を考えた時、好きなことだからこそ社会と繋がるための困難にも立ち向かえるのだと思います。

子ども時代、特に幼児期は「好きなこと」を見つけ、それにじっくり関わる時間を保障され、好きなことをする自分を認めてもらってこそ、「社会に出て苦しいことがあっても頑張れる」
と、私は思うのです。

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保育所保育指針

「保育所保育指針は上等な素材です。でも、どんな上等な素材も、料理の仕方を知らなければ、食べることはできません」私の保育所保育指針の講座は、こんな言葉で始まります。
これまでの指針の講座の先生方は、「この素材が、どんなに素晴らしいか」を語っても、「どう料理したらいいか」は語らなかったので、保育士たちは、素晴らしい素材であることは知っていても、料理して食べることはできなかったのです。
「私は料理の仕方を教えます。そして、今日は一つだけ皆さんと作ってみます。でも、それで皆さんが、この上等の素材を全部食べられるようになるわけではないです。自分で、何度も作ってみなくては、自分の食べ物にはなりません。」
この例えは、とても分かりやすかったらしく、感想にも多く書かれていました。

「料理の仕方(読み解き方)のコツ」は2つ。その一つは文頭に「どのような保育をすれば」をつけ、指針の文言を分節や文章ごとの細切れにして、最後に「・・な子どもが育つか?」をつけて自分に問い返すということです。そしいくつかの例を挙げて、試食してもらいます。(こだわって読み解くって面白い!と思ってもらうということです。)
その後のワークでは、3つの指針・要領共通の「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の文章に、その読み解きを試してみます。

その感想を少し紹介します。「指針は使いようによって保育士の宝になると実感できた」「どのようにすれば?をつけて考えていくと教えていただき、指針の見方や考え方が変わりました」「その素材の料理法は?と実際に二人で考えて話し合うことで、指針の深い意味にたどり着くことができた」「読み解き方で指針が身近になりました」「いままで指針を読み流していたことに気付き、これからは読み解いていきます」「ほしく甫保育指針を料理する方法、園での研修にすぐに活かしていきます」「料理する作業は想像以上に難しかったですが、ワクワクするので、料理が上手にできるようになりたいです」

たくさんの素晴らしい先生方が年月をかけて練り上げた文章です。その料理の仕方をもっと教えて、現場が活かせるようにしていきたいものです。短大で教えていた時代から、学生から「保育指針の授業がいちばんおもしろかった!」と言われていた私の読み解き方です。
ここには書ききれません。保育所保育指針の講演や指導をされる先生方にこそ、一度「保育所保育指針料理法」の講座をしたいような気持ちです。

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不思議なご縁、旅先で保育の話

かつて、私のクラスにいて中途退学した教え子が、やはり資格を取ろうと思って行った通信制の大学で出会って、「心理に興味がある」というその人を私に紹介したという不思議なご縁のM保育士。いま神奈川にいるというので、横浜の娘のところの駅近くで、昨夜会って食事をした。

今の保育園(会社組織のたくさんの園を経営しているようだ)でも、園長より主任より勤務が長く、信頼されているらしく、たくさんの保育の話をした。特に支援や配慮の必要な子どもに目が行き、今は個別支援を中心に関わる立場にいて、3か月で自分が関わっている6人はほぼ落ち着いたという。特別支援教員の免許を取って、特別支援コーディネイターという立場で活躍してくれそうな人だ、いろいろな先生方に学びをつなぎたい。

その中で、いつもその保育士が引っ掛かることとして次の様なことが語られた。
「すぐ(部屋や園庭から)飛び出す子がいて、いくらダメだと言っても効果がなかった。巡回指導の先生が『保育士の気を引こうとしているだけだから無視するように』『目を合わせずに、とめて反対を向かせる』と指導され、そうしたら、その関わりをとても嫌がったが、結果としては出ようとしなくなった。」他にも、「すぐ立つ子は、立とうとしたら膝を押さえつけることで、『立たなければ、嫌な(痛い)ことをされない』と教えることで、座っているようになる」という指導があり、その子は座っているようにはなった。しかし、目を合わせずに近づいてくる保育者をとても嫌がることと、座っている時の辛そうな表情をみると、結果が出たからと言って、これでいいと思えない。」と悩んでいた。
さすが、この保育士の感性は素敵だ!

私はこう話した。
「気を引こうとしているから無視するように」とは、多くの心理士や巡回指導者が助言するけれど、私はそれはNeglectという虐待だと思っている。気を引こうとしているのなら、「ちゃんと気を引かれてやる」ことが大事で、「無視することで諦めさせる」は虐待と同じこと。その指導が多くの子どもたちの自尊感情を育ちにくくしていることに専門家と言われる人たちが気付いていない。
ただ!!(ここからが大事!)悪いことをした時に気を引かれるのではなく、普通の時(悪いことは何もしていない時)に気を向け、声をかけ、認めることが大事で、普通の保育者はそのいう子どもが何もしていない時は声をかけず、悪いことをした時だけ声をかけてしまうから、それが強化刺激になってしまう。何もしていない時に声をかけることができるのが「ぷろの保育者(ぷろほ)」。

その保育士は、「座っていなかった子に、『今日は座り方が上手だった』と褒めるようにしたら嬉しそうに座るようになった・・・あれでよかったんですね!」と嬉しそうに話してくれた。
「いつか、関係園の全体研修にお呼びしてもいいですか?園長もお願いしてって。いつでも先生の都合に合わせますって」と。ありがたいご縁がまた繋がった。

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お母さんの声

20年ほど前に、ある小児科医から「赤ちゃんが泣いている時に誰の声を聞かせると早く泣き止むかという研究を20年来しているけれど、やはりお母さんの声がいちばん早く泣き止むんだよ」と伺ったことがある。そのときに、「やはりお腹の中にいるときから聞いている声は安心できるんでしょうね」とお話していた。

ところがそれから10年ほどして、その小児科医が「山田さん、前に言っていたことね、最近違ってきたんだ。お母さんの声と同じ言語の女性の声との差がなくなってきたんだよ!」と不思議そうに言われた。
もうその頃「子どもとメディア」の活動をしていた私には、ピンとくるものがあった。おなかの中にいるうちから聞いているからお母さんの声で泣きやむのであれば、お腹の中で聞く体験が減ってくれば、それが安心材料にならなくなるだろうということだ。
赤ちゃんの聴覚が完成したのち、臨月になったお母さんが誰かとしゃべれば、その声は赤ちゃんにも伝わる。しかし、お腹が大きくなってあまり外に出なくなった妊婦のコミュニケーション手段は、あっという間におしゃべりではなく黙って文字を打つことに変わってしまっていたのだ。
それでは、赤ちゃんがお母さんの声をお腹の中で聞くことが激減するのも道理である。

私が短大で教鞭をとっていたころ、学生に「あなたの身近に妊婦がいたら、メールやLineではなく、電話をしなさい。相手がしゃべる声は赤ちゃんにも聞こえていて、それが生まれてからの安心感につながるのだから・・」と話していた。
いまは、このようなネットを通して伝えているが、これが多くの方の耳に(?)届いたらいいなと思う。

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ぷろほ春期総合演習研究発表&修了式

2018年度春期もあと2日を残すのみとなりました。滋賀から、徳島から、長崎からの受講生が卒業します。
最後の20日は、午前中総合演習研究発表、午後は修了式です。
おいでいただける方はどなたでも大歓迎!

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