お母さんの声

20年ほど前に、ある小児科医から「赤ちゃんが泣いている時に誰の声を聞かせると早く泣き止むかという研究を20年来しているけれど、やはりお母さんの声がいちばん早く泣き止むんだよ」と伺ったことがある。そのときに、「やはりお腹の中にいるときから聞いている声は安心できるんでしょうね」とお話していた。

ところがそれから10年ほどして、その小児科医が「山田さん、前に言っていたことね、最近違ってきたんだ。お母さんの声と同じ言語の女性の声との差がなくなってきたんだよ!」と不思議そうに言われた。
もうその頃「子どもとメディア」の活動をしていた私には、ピンとくるものがあった。おなかの中にいるうちから聞いているからお母さんの声で泣きやむのであれば、お腹の中で聞く体験が減ってくれば、それが安心材料にならなくなるだろうということだ。
赤ちゃんの聴覚が完成したのち、臨月になったお母さんが誰かとしゃべれば、その声は赤ちゃんにも伝わる。しかし、お腹が大きくなってあまり外に出なくなった妊婦のコミュニケーション手段は、あっという間におしゃべりではなく黙って文字を打つことに変わってしまっていたのだ。
それでは、赤ちゃんがお母さんの声をお腹の中で聞くことが激減するのも道理である。

私が短大で教鞭をとっていたころ、学生に「あなたの身近に妊婦がいたら、メールやLineではなく、電話をしなさい。相手がしゃべる声は赤ちゃんにも聞こえていて、それが生まれてからの安心感につながるのだから・・」と話していた。
いまは、このようなネットを通して伝えているが、これが多くの方の耳に(?)届いたらいいなと思う。

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