「保育心理演習」という講座

この講座は、「相手の立場に立つ」ということを演習としてトレーニングすることを目的としています。「相手の立場に立つ」とは、保育者としていやになるくらい聞いている言葉だと思います。しかし、「相手の立場に立つ練習」をしたことはあるでしょうか?

例えば、野球で「ヒットを打つことは大事」だと言われて、「そうだ!」と思っても練習をしなくては、ヒットは打てません。野球のコーチが「ヒットを打つことが大事」というだけでなく、「ヒットを打つにはどうしたらいいのか?」「どんな練習をしたらヒットが打てるようになるのか」を指導しなくては、コーチと言えないでしょう。
野球のコーチだったら、「ヒットを打つにはボールをよく見て、バットの芯をボールに当てて、バットを思いきり振り切る」などと教えるかもしれません。さらには「ボールをよく見る動体視力をつける練習」「バットの芯に当てるバッティング練習」「バットを振り切るスィングの練習」と練習方法を指導するでしょう。

しかし、保育者養成に関わる方の中に、「子どもの立場に立つことが大事だ」としか言わず、「どのようなことが『子どもの立場に立つ』ことなのか」「どんな練習をしたら『子どもの立場に立てる』ようになるのか」を指導しない方は意外に多いのではないでしょうか。
子どもの立場に立つには、何が必要で、どのようなトレーニングによってその力はつくのかを提起し、子どもの立場に立てる保育者の養成に一歩近づきたいと思います。

一方で、相手の立場に立つということは、そう簡単なことではないことも心しておかなければなりません。
相手の立場に立つということは、自分のそれまでの生き方と異なる価値観を受け入れることであり、それはとても危険なことでもあり、怖いことと感じます。しかも、同じ事を体験しても人が違えば、受け取り方は違うのです。そっくり同じ事は体験できないなら、何で補ったらいいのでしょう。そこには、自分をその立場において、自分のこととして考える想像力が必要になります。
ここで、なるほどと思ってすぐにできる人はいません。どうすればいいかがわかっても、練習せずにヒットが打てる人はいないのです。
この講座では、その練習方法を提示します。最初からうまくはいきません。最初からヒットは打てない(まぐれ当たりはありますが)のと同じです。相手の立場に立った関わりができずに落ち込んで、失敗しながらも毎日練習を続ければ、1か月後には少しは相手の立場に立った応答ができる(ヒットが打てる)かもしれませんが、分かったつもりになって練習を止めてしまえば1か月後もヒットは打てないでしょう。さあ、やってみましょう。

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