2014年度春期開講式

今日から2014年度春期が始まり、今日は全科目受講の3名を迎えて開講式でした。
それぞれに、自己紹介をしてもらいましたが、開講式から感動の涙は初めてでした。
園のリーダーとして担任から様々な相談を受けながら、その子どもにどう関わったらいいのかが明確に示せずに苦しんできたことを語り、「やっとここに来れました。ここで学んで、子どもと一緒に苦しんでいる先生方の役に立てる自分になって帰りたい」と涙される姿に、事務局ももらい泣き。
それぞれの人生の節目にぷろほで学ぶことを選んでくださった受講生の方々の気持ちに応えられる講座にしようと、講師たちも気持ちを新たにしました。
Tea Timeで一緒にお茶しながらの絵画療法の先生の「失敗するって新しい自分と出会うってことよね!」とのお話に、「私もその講座受けてみたい!」と手帳を確かめて「あ、この日来れる!」ってS先生。こんなことも開講式や閉講式でしかできない交流。
さあ、明日から3ヶ月のスタートです!

保育に携わる全ての人へ、学びの場を提供します。
現場で必要とされる専門知識を、3か月で習得することができます
特定非営利活動法人 子どもと保育研究所 ぷろほ
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明日から春期開講

明日から2014年度春期が開講です。受講生は科目受講も合わせて20名。
3ヶ月入学型の受講生は3名です。鹿児島から、広島から、保育の中心的立場の方が、2年越しで園の了解をもらって入校されます。
一方、ぷろほ終了後は宮城に学習支援に行くことを決意しての若き受講生は、ぷろほの被災地支援として全額免除で学んで頂きます。彼の人生の大きな1歩に随伴できることは、ありがたいことです。
今期はどんな出会いがあるやら、どんな成長に出会えるやら、ワクワクしながら準備中のぷろほです。
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軍隊をすてた国コスタリカ(DVD)

昨日手に入れた「軍隊をすてた国」のDVDをみた。中米の小さな国が、日本から遅れること2年、1848年に軍隊(戦争)放棄を憲法に明記し、今も守っている。

日本の九州と四国を合わせたほどの小さな国。しかも、紛争の多い中米の中にあって平和を守るために、国家予算の4分の1を教育費につぎ込んでいる。(日本との差の大きさに愕然!)

スラム街の小学校の授業風景が流れる。
2年生。「子どもの権利とは何でしょう?」と先生が問うと、すかさず「遊ぶこと!愛されること!」と答えが飛ぶ。先生が再び「愛される(ようにする)ことは(子どもの)義務ですか?」と問うと、「ノー!」と叫ぶ。

子どもの権利条約を批准しても、学校教育の中に全く入れようとしない日本と大きな違い。

子どもたちの生徒会選挙も、政党を作って公約を掲げ、選挙運動をする。選挙を身近な物にする教育があるから、実際の選挙の投票率も高い。選挙に行くのは民主主義を守るための国民の義務という考えのもと、選挙に行けるように、交通機関など国全体が選挙最高裁判所の命の元に動く。「選挙できる18歳になったら、国にも自分にも責任があるの」と堂々と語る。

高学年になると、国を担う人間になるために具体的な課題と向き合う。コカインなど麻薬の問題をどう解決するか?環境問題、ゴミ問題を通して平和とは?をグループで話し合って発表する。
6年生の「世界の平和」の話し合いの中で一人の女の子が言う。「貧乏とお金持ちってどうしてもあるわけよ。人をうらやむ気持ちって私にもある。それをどうしていったら平和になるの?」・・彼らは話し合い、自分たちなりの結論に行き着く。「差別はあっても、お互いを認めないとね。違いも含めて自分を受け入れることだと思う。」彼女は親の離婚、家庭崩壊から立ち直り、世界の紛争に苦しむ子どもをなくすためにジャーナリストを目指す。

芸術学校は小学生から高校までの一貫教育で、楽器演奏、絵画・彫刻、演劇、楽器作り、様々なダンスを毎日午後学んでいる。完成度はプロ並みだ。

国のことを外国の人に紹介する重要な仕事だから、観光ガイド養成も国立の学校で行われている。小学生たちが正規の授業としてガイドから学ぶ。

一つ一つの発想に目から鱗が落ちるようなDVDだった。早乙女勝元さんが2002年に作成したDVDだったが、なかなかこのようなテーマのDVDは拡がらなかったらしい。絶版になり廃棄されるところを赤とんぼ書店さんが手に入れ、細々と頒布している。美しいコスタリカの自然や生き物と一緒に、教育関係者にとっては様々な発見がある。是非見てほしい。

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人生を変える本

1冊の本がその後の人生をかえてゆくってことあると思う。それはその本がすばらしい・・というだけではなく、その本にであう前に自分の中に蓄積されてきた想いや体験・周りとの出会いが、その本にであって一気にカオスが形になり、花開くようなタイミングなのだ。
今の私にとって「ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい」というクリスティン・バーネットの本は、まさにそれであった。
保育者でもある母親のクリスティンは、重度の自閉症と診断された我が子に施される「ファースト・ステップ」というトレーニングや「障害児のためのプリスクール」で、息子ジェイクが(必要であっても)好きではないことを強いられ、好きなこと(もの)を奪われる姿に気づき、、自らの保育園で「その子が好きなことを存分に(muchiness)させる」ことを基本に育てはじめる。
その後のことは本を読んでほしいが、クリスティンの徹底したジェイクへの信頼と創造力がジェイクの力を目覚めさせ、彼は今12歳で大学に在籍し、ノーベル賞に最も近いと言われる宇宙物理学者である。
私たちがぷろほで基本理念としている「好きなことをできることに、できることを得意なことに、得意なことを役に立つことに・・」を、徹底して実践した姿をみて、とても力をもらった。
奇しくも発達障害の子どもたちや若者たちとの新たな出会いもあり、彼らと共に自分の好きなことを、自然と温かい人たち中で、思う存分自分を満たすまで好きなことをやれる場を作りたい・・・、そこで生まれたものを発信したい。私の人生の最後はそんな場をO島に作れたらいいな・・・なんて夢が浮かんでしまった。ぼくは数式で宇宙の美しさを・・
ぷろほはあと10年(72歳まで)はやりますけど、その後・・・。
夢を持ったら、とにかく話してしまう私。それがエネルギーになって実現に向かってゆくものだ。ぷろほもそうやって生まれてきた。いま10年後の話しをすると、すこしずつ、賛同者や一緒にしたいという人も出てきている。一緒に夢を描こう。

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子どもたちの発想はどこまでも・・・

昨日は佐賀→長崎での保育指導。

私が5年くらい関わっているある事業内保育園でのこと。

ここでは、年長児を中心に1年間の畑仕事をベースに、様々な造形や歌つくりなど保育のあらゆる分野に展開してゆく保育を実践しているが、毎年子どもたちの発想に感動する。
夏祭り(運動会)の御神輿も、毎日世話をする野菜たちをモデルに作るからその迫力は凄い。
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去年はたった二人の卒園生だったが、一人はキューリ、一人はピーマンにこだわって1週間以上掛けて作り上げた。
さあ、年度の終わり、先生は「ラディッシュちゃん(ずっと畑でみんなと一緒にいろいろしてくれた妖精?)にお手紙を書こう!」と提案した。ところが子どもたちは、「どこにお手紙を出せばいいのだろう?」「ラディッシュちゃんの家はどこだろう?」と、まず手紙の届く先を探すことになった。
畑の土の中を掘る、石垣の石をどかす、草むらをかき分けて探す・・なんと1週間ほど探し回ったあげく、「ラディッシュちゃんはこれから女王様になるから王国がいるんだ。王国を作ろう!」となり、段ボールでは雨が降ったら破れる、粘土は・・ととうとう畑の守り神を作ったのと同じ陶芸用粘土でお城をを作ることに。
しっかり設計図(もちろん郵便受けもある)を書いて、制作開始。
ところが、「僕たちが作っていることが分からないとラディッシュちゃんがここに住んでいいかどうか分からないから・・」と、子どもたちは毎日畑まで(子どもの足で15分ほどの坂の上)粘土とシートを運んで、畑の横で制作すること1週間。
できたお城を同じ法人内の病院にいる陶芸療法士に焼いてもらって、できあがったのは卒園後。でも保護者と一緒に土曜日に園に来てくれた子どもたちは、焼き上がったお城を自分たちで畑まで運び、考えた末に「自分たちが王国を作成した場所」に置くことにした。
この子どもたちのこの園での成長が象徴されているようなお城が、畑仕事をする下級生を見守る。
お城のお風呂は雨水を溜めるためにほかの屋根とは違って、取り外せるようになっている。雨を溜めてお風呂をいっぱいにして沸かすが、ラディッシュちゃんが入る時に恥ずかしくないように取り付ける小さな屋根もある。14042301
子どもたちの発想の拡がりを、担任は感動の涙で報告してくれた。

 

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拝啓 西日本新聞 筑豊総局長 様 3月30日の貴社のかわすじ今日談について

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西日本新聞の筑豊総局長のコラムについて、本日お手紙を差し上げました。ことばを生業にしている新聞記者が幼児期を、子どものことばを一体どう考えてのコラムなのか、是非ともお応えを待ちたいと思います。▽以下、お手紙の内容です。

▷ 幼保小連携に関係してのMIMの記事(添付挿入)を拝見し、子ども時代という視点がないことに愕然としてお手紙差し上げます。

子どもたちは、幼児期に自分の命を活き活きと生きてこそその上に紡がれる人生が輝くのであり、ことばを覚えるために生きているのでも、ましてやきちんと文字が書けるようになるために幼児期を過ごしているわけでもありません。人生の基盤となる幼児期をどのように過ごすかは、まさにその子の自尊感情を含めた一生に関わることです。MIMにその視点があると思えないのです。日本の学校教育の「個人差を無視したカリキュラム」に対して特別支援が一人ひとりに目を向けたアプローチを研究しているのは大切なことで、もちろん、文字表記を間違えて覚えないような工夫を保育者や教育者が教育の中で改善し続けてゆくことは重要ですが、それを幼児期にまで指導として日常に導入するとなると話は別です。幼児期はそのような学習を超えるはるかに広い体験こそが保証されていなければならない時期なのです。

そして、子どもたちの発音のつまずきは、今の子どもたちの発達環境から見直して頂かないと問題が見えてこないのです。同封しました私の著書「ことばが育つ保育支援」の第1章に詳しく述べておりますが、ハイハイの時期が短くなった今の子どもたちは、発音自体が不明瞭です。さらに、育児語で話しかけられずにテレビやDVDの音声という一方的な言語に晒されている子どもたちは、ことばがコミュニケーションに繋がっていかないのです。  これらの「上手くいかないことを生み出している基盤」を改善するのではなく、間違えやすいことばだけを取りあげて教育されることは、子どもたちにとっては「苦手な時間が増える」ことになりかねません。

ことばは、話したいことがあって、伝えたい人がいるから、そこに手段として学び取られるものです。つまり、ことばを覚えることやきちんと書けることは、話したいと思うほどの感動や生身の体験をしっかり持つことと、それを伝えたい・話しを聞いてくれる相手があってこそ必要になるのです。この前者二つが今の子どもたちに欠けていることこそが問題であり、それを無視して、手段のみを「飯塚方式」などと提唱されては、子どもたちはたまったものではありません。

また同封した小冊子「子どもの心と絵本」にありますように、文字によることば理解が身につくということは、感性で感じることを放棄することを生み出しかねません。とくに、苦手意識のある子は確実なルールを覚える方に頼ります。幼児期に感性で感じることが、これ以上狭められることで、人のきもちや社会の動きなどの大きな視野が失われるのではないかと思うのです。

友安様は「MIMの勉強会などが飯塚の保育関係者に広まったら・・」と書いておられますが、その結果の子どもたちの姿をどうイメージしておられるのでしょうか?私にはどのような大人になってほしいと思ってのことなのかが見えません。  子どもたちが出しているSOS(特殊音節につまずくこと)は、何が欠けていると訴えているのかに目を向ける大人が一人でも増えることを願ってやみません。

また、幼保小連携は県内では各地で行われており、久留米市では20年以上も前から、久留米市立幼児教育研究所を中心に綿密に行っております。筑豊の学校と保育現場の繋がりが遅れている現状です。しかし、何の公的視点も財政基盤もないまま飯塚市でできる事でもないでしょう。県内の教育事情についても、もう少し調べてからお書きいただきたく存じます。

ましてや幼保小連携ということばの意味は、小学校で必要になることを幼稚園・保育園に下ろすことではなく、幼稚園・保育園で育った子どもたちの資質や人間関係のあり方を小学校に繋ぐことで、子ども自身が「小学校でまた一から自分を分かってもらっての関係の紡ぎ直し」にならないようにとの意味が重要なのです。

私は、今年度の飯塚市の保育士の研修講師を引き受けている立場でもありますが、子どもたちのことばの発達について、今後の研修の中で、このMIM導入の考え方とは相容れないことを申し上げてゆくことになるかと思います。是非、友安様も私どもの考えもお聞きいただいて、真に子どもたちが活き活きと過ごせる幼児期を飯塚で実現するために、お力をお貸しいただきたく思います。                                                                                                                                                                                                                                 2014年4月10日                                 NPO法人子どもと保育研究所ぷろほ                                         所長      山田 眞理子

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汐見先生との対談

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2月に汐見先生宅でさせていただいた対談が、東本願寺の機関誌「同朋」4月号に掲載されました。

九州大谷短大やぷろほの他、各地の浄土真宗大谷派の寺院にはおいてあるはずですので、お近くにありましたら見てやって下さい。

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ぷろほも3年目を迎えました!

ぷろほは2011年に設立総会をしています。ですから今年は早くも3年目なのです。初めは「理想を追うのもいいけれど、1年持たないよ~」と言われたこともありましたが、皆様のご支援により、卒業生・受講生に恵まれて、何とかやっています。
この2年の間に「言語保育セラピスト」資格や「牧野・山田式言語発達検査」を通して、子どもたちのことばについて、様々な視点から考えることができました。
また、各地からの受講生を迎え、受講生たちの新たな次の1歩へのお手伝いをすることができたのも、ありがたいことです。
3年目の記念に4月12日14:00~元気のもりホールおいて、人形劇団おひとり座による人形劇「ともだちや」を企画しています。人形劇現役最年長の西川さんは、人形劇人生60周年で喜寿。いっしょにお祝いしたいと思います。
昨年は所長のブログの更新が滞りました。今年は講演報告を中心にこまめに載せたいと思います。子どもと保育研究所ぷろほを、今後ともよろしくお願いいたします。

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アスバルのHPに掲載されました

http://www.asubaru.or.jp/role_models/detail/247

子どもの心に寄り添える保育者を養成したい

 「子どもの心に寄り添える保育者を育てたい」。そんな思いを抱き続け、30年ほど大学で教鞭を執ったのち、2012年に「子どもと保育研究所 ぷろほ」を開設した山田眞理子さん。「保育者になった後、さらに学びを深められる場って、日本になかったんだもん」とはつらつと笑顔で語る山田さんは、自らの信じる道をまっすぐに歩んできた。
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大学と現場で学び、ぶれない志を抱く

 心理学に興味を持ったのは、高校2年生の夏休み。心理学検査会社を営む伯父が聞かせてくれた話が、とてもおもしろかったのだという。心理学を学ぶべく、広島大学の教育学部へ入学。スキー部に入り、臨床心理学に魅せられ、大学生活を謳歌していた。だが、専門課程の3年次になると、アイデンティティを大きく揺さぶられることに。「カウンセラーは、いろんなことに苦しんでいる人に向き合う仕事。私は相手を引っ張っていきたいタイプなのに、先輩たちから『そうじゃない!相手の話をじっくり聞きなさい』と言われて…。私が通用しないと動揺し、自己否定感に苛まれた。結局は先輩がかけてくれた『誰かがあなたの一面を認めなくても、あなただけは“これも私なの”と認めてあげなさい』という言葉で救われたものの、心理学の深さと恐ろしさを思い知りましたね」と振り返る。
 その後、京都大学大学院へ進学。日本におけるユング心理学の第一人者として知られる河合隼雄先生のもとで、学びを深めた。一方で児童相談所のセラピスト、不登校児の家庭教師として現場も経験するうち、心に芽生えていた想いが確固たるものになった。「週1回、私が子どもに関わっても限界がある。毎日子どもと接する保育者が、少しでも心理療法的に関わってくれたら。少しでも多くの子がつまずかないように、子どもの心をケアできる保育者を養成したい」。
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育休で得た経験や感覚、人脈が活きる

 28歳で九州大谷短期大学に就職し、幼児教育学科の講師となる。ところがわずか半年後、数年来の友人から突然プロポーズされ、結婚が決まったのだ。山田さんは学長におずおずと申し出た。「大阪の人と結婚するので仕事を辞めさせてください。子育てがしたい」と。すると学長は意外な言葉を投げかけてきた。「育児休暇を取りなさい。何年いりますか?」。山田さんが「10年ください。私は子どもが3人欲しい。3人目が3歳になるまでおよそ10年かかると思います」と即答すると、学長は「育児の経験をもち、10年後に戻ってきて」と全てを受け入れてくれたという。
 とはいえ、山田さんは完全に休んでいたわけではない。大阪に住み翌年に出産しても、半年に3日間の集中講義などで授業を継続。夫が有給を取り、大学の宿直室で赤ちゃんの面倒をみてくれた。1歳の長男を教室の最前列に座らせ、長女をおぶって授業したこともある。長男が3歳になると、福岡県穂波町(現・飯塚市)で「創造保育」を実践する保育園にほれ込み、近くに新居を構えて家族で移り住んだ。創造保育とは、子どもの心と体を大切にし、想像力豊かな感性をのばしていこうという保育。園との出合いが原点となり、山田さんは子どもと芸術・文化に関する様々な活動や、子どもを取り巻く問題にも取り組み始めた。「子育てを通していろいろな交流が生まれ、自分が広がりました」。
 そして3人目の子が3歳になると、完全復帰を果たした。11年の育休を経て、とんとん拍子に教授になった山田さんに、学内の風当たりは強かったという。「結果を出すしかない」。小人数クラス、保育心理士の資格制度の設立など、育休中に磨きをかけた発想力や実行力、豊かな人脈をもとに大学に新しい風を吹き込み、周りに認められていった。
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変わりゆく環境の中で、子どものために

 昨年、大学を退職して「ぷろほ」を設立した。小倉駅にほど近いビルの一室で、保育者を対象に多様なクラスを開講している。「保育士として働き出したあとも、学び足りないことや悩むことが多々ある。ここで実践する力をつけてほしい」と力を込める。立ち上げに際して「採算が取れない」と冷ややかな反応もあったが、「社会が必要としていて、自分にできそうなことはやるしかない」と志を貫いた。今では九州各県や福島、滋賀から通う人も。山田さんの想いは確実に広がっている。
 「いつの時代も子どもは変わらないけど、とりまく環境が変わっていく。母親は孤立し、子どもはメディア漬けになり、自然や芸術体験が失われ…。だからこそ、静かに苦しむ子どもや保育者に私は何ができるか、いつも考えています」。子どもと子どもに関わる人への愛情は、限りなく深い。「それがね、私が子どものときの写真を見ると、どれも弟や小さな子を抱っこしてるの」と微笑む。幼いころからあねご肌だった少女は、子どもをケアする人や組織づくりに情熱を傾け、ついに自分の理想とする場を誕生させた。60歳からの再出発、「とっても楽しいわよ」と満面の笑みで目を輝かせた。
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コラム

私の大切な時間

 趣味について尋ねると「うーん、うーん…」としばし考え、「趣味を持たなきゃいけないほど、ストレスためてないね。大変なことはあっても、嫌なことはしていないし、全部私の時間。仲間との飲みとか芝居、和太鼓なんかも好きだけど、趣味とは違う」とあっけらかんと笑う山田さん。3人の子育て期も、楽しくて仕方なかったという。「子どもの一挙一動がおもしろかった。保育は子どもとするもの。困ったら、子どもにどうしたらいいか聞くの。どうしたら喜ぶかなって考えるの。子育てのパートナーはあくでも子どもですよ」とアドバイスしてくれた。
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プロフィール

群馬県生まれ。広島大学教育学部卒業後、京都大学大学院教育学研究科修士・博士課程修了。京都大学では河合隼雄先生のもとで心理臨床、箱庭療法などを学ぶ。心に寄り添える保育者養成の必要性を感じて、九州大谷短期大学幼児教育学科に就職。在職中に「保育心理士」資格を立ち上げた。大学を退職後、保育者になった後の学びの場を作るべく、2012年NPO法人「子どもと保育研究所 ぷろほ」を設立。NPO法人「チャイルドライン もしもしキモチ」代表理事、NPO法人「子どもとメディア」代表理事。

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砂プロニュース

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「福島の園に砂遊びができる砂を送ろう」プロジェクトにたくさんのご支援・ご参加ありがとうございました。今、ニュース作成中です。ご協力くださった方で、住所がわかる方にはニュースができたらお送りさせていただきます。(ニュースのPDF↑みてください)
拡大してみていただいたらわかりますが、鹿児島、宮崎、長崎、大分、佐賀そして福岡。多くの方々のご協力で実施できました。第2陣(7月27日)への協力のお申し出も各地からいただいています。支援金は、次回はちゃんと福島までダンプで走ってくれる吉田産業さんに(今回はガソリン代や高速代などの経費のほかは取らずに行ってくれました)賃金をお支払いして行っていただくことで、昨日打ち合わせができました。

10トンをはるかに超える砂、支援金は今でもまだ届いています。私が深く考えもせずに「福島の子どもたちは砂遊びができないらしい。九州から砂を送ろう!」言い出したことが、これほどのうねりになるとは予想もしていませんでした。そして、皆さんの様々な思いやりと主体性に支えられて、第2陣の砂は二本松市といわき市に運ばれます。

福島市の砂を運び込んだ園からはお礼の手紙や新聞記事と一緒に子どもたちの様子が伝えられています。いま砂場は子どもたちの一番人気の場所で、年齢ごとに順番待ちの状態。保育者が散らばった砂を片付けていると「先生ばっかり砂触ってずるい」と子どもに言われるそうです。

 

 

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