「子どもの立場に立って考える」「子どものこころに寄り添う」という言葉は、保育者なら何度も聞いたことがあるだろう。
しかし、その練習をしたことがあるだろうか?そして、その練習方法を提示されたことがあるだろうか?答えは、おそらくNoである。
ではもしあなたが野球選手だとして、コーチが「ヒットを打つことが大事だ」と言い、「ヒットを打つには球をよく見るんだ!」というのを聴いただけで、その翌日から練習もせずにヒットが打てると思うだろうか?そんなことはあり得ない。では相手の立場に立つことはヒットを打つより簡単で、練習など要らないことなのだろうか?それもあり得ないことだ。
このところそのことをテーマにしたワークショップ入りの研修を続けて引き受けさせていただいた。通称「一人称ワーク」といい、私なりに30数年実施し改善してきた「相手の立場に立つ」練習の一部を講演の中で30分~1時間のワークショップで紹介する。「頭の中で子どもの立場に立って考えてみる」ではなく、その子になって(演じて)そのシーンの保育者役を別の人に演じてもらって、自分の中に起こってくる気持ちに目を向けるのである。(ぷろほの「保育心理演習」にあたる。)
たくさんの感想が「自分自身のしてきたことへの気づき」を伝えてくれた。
「今まで、子どもの立場に立って考えるなんて当たり前に意識していたと思っていたけれど、今日やってみて全然足りなかったことが分かった。子どものためと思っていたことが、自分でやってみると子どもを不安にさせていたり、自信をなくさせていたりしていたと反省しました。」
「困った子がいたときは実際に困った子になりきることで見えてくるものがあると分かりました」
「子どもの立場で考えているようで、考えられていない自分に気づきました」
「ダメなことはダメなんだけれど、そのことをその子の立場で伝えられる教師になりたいと思いました。」
「演者になることで、子どもとして感じることができ、子どもの心情を理解し、寄り添うことが可能になると、凄く感じました」
「子どもが納得していないだろうなと思いながら、反省させ、謝罪させていた自分に気づきました」
「子ども同士のトラブルを大人が解決しても納得できないことが伝わってきました」
「一人称で書き直すだけで、子どもの気持ちが自分の中にすっと入ってきて、そこから考えることができました」
「今日の実践交流会を見て、子どもたちは様々な気持ちを抱えていること、一番大事なのは子どもがどうして欲しいと思っているかを感じ取ることだと分かりました」
「自分が良かれと思って言っていたことが、その子の立場になって言われてみると、子どもを追い詰めていたことに気づきました」
教えられたことは忘れても、自分で気づいたことは忘れない・・。この気づきを大切に「なって感じる」この一人称ワークが、多くの園の園内研修で拡がることを願っている。
(ワークの流れは、保育心理演習のテキストぷろほ発行の「あなたの一言」(\650)でワーク1~4の段階をおって紹介されている。それぞれの保育者が持って園内研修に役立てていただきたい。)