「改訂児童福祉法」勉強会 

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先日、元児童相談所所長・元西南大学教授である淵上先生を囲んで、3月に改訂された児童福祉法の勉強会をしました。以下、皆さんにも知っておいていただきたいポイントを報告します。

以下、淵上先生のお話の要点
今回の児童福祉法の改訂は、第1条、第2条が大きく書き換えられた画期的なもの。
その第1条に「子ども(日本語訳は児童)の権利条約の精神にのっとり・・」と明記され、それまでの「愛護されねばならない対象としての子ども」から「権利の主体としての子ども」という大転換がある。
日本の子ども関連の法律の中ではじめて「意見の尊重」と「最善の利益の優先」が具体的文章として書かれた。
他の条項は一部改訂がなされていくだろうが、第1条の改訂はおそらく50年以上なされないと思われるため、この精神に基づいた子ども施策のあらゆる転換がこれからの社会を担う我々の使命。

まず日本における「子どもの権利条約」を学び直すところからが必要。日本は子どもの権利条約を批准(1994年)してから、子どもへの認知や環境の改善について国連から3回に及ぶ勧告をうけており、3回目は改善が見られないことから「強く政府に勧告する」と書かれている。

第2条「・・児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見(この日本語訳の妥当性については後述)が尊重され、その最善の利益が優先して考慮(この日本語訳についても後述)され・・」という文章に関して、最も違反していると気づくのは、関心や理解度の異なる子どもたちを一日中同じ部屋に置いて同じ授業をする日本の学校システムである。
特に「教育が競争的である」ことは3回とも指摘されているがその改善は大学入試における方法の変更にとどまり、日常の学校教育システムの改善には踏み込んでいない。
この背景には、そもそも1947年に児童福祉法が制定されたときの、当時の厚生省と文部省の確執がある。最初の案の中には「児童の福祉と教育」に関する法律であることが書かれていたが、文部省が「教育は自分の領域だ」と主張して「教育」の言葉を削ったため、児童福祉方の福祉の言葉の持つ意味が限定されることとなった。そのまま70年、今でも子どもに関する法律が「教育基本法」と「児童福祉法」に分かれていて、幼児期の教育をはじめ、行政に影響を与えている。

子どもの権利条約の中の文章の訳語に見え隠れするあれこれ
1,福祉:日本においては welfareを福祉と訳し、そこには「保護を要するマイナスをゼロにしてゆく視点」があるが、子どもの権利条約で福祉と訳されている単語はほとんどwell-beingである。これは、日本で言う狭い意味での児童福祉ではなく「子どもの幸せ」とでも訳されるべきものである。

2.第一義的(Primary):第2条2項で、「児童の保護者は、児童を心身共に健やかに育成することにおいて第一義的責任を負う」とうたわれているprimaryは、保護者に対しては第一義的と訳されているが、同じ単語が国や地方公共団体が主語になったとたんに「優先的に」「主に」と訳される。ここから何を読み取るかが大事。

3,子どもの意見表明権(Views):意見表明権については、日本においてよく問題にされる。その最悪なものは「子どもに意見表明権やらやったら、勝手なことばかり言うようになる」というおじ様方の言い分である。権利はやるものではなく、そもそも子どもも国民であるから、基本的人権として保障されているものであり、それを奪っていたことに気づこう。
意見も言えない小さい子ども波動するのかと聞かれることもある。子どもの権利条約で言われている「意見」の言語は「View」であって「opinion」ではない。
そしてこのViewsには、とらえ方・感じ方・思い・願い・見え方をいう意味が含まれ、子ども一人ひとりが「感じる自由」を持っており、「意思を持つことを尊重」されて生きることが保証されるというのがこの条項なのだ。「勝手なことを言うようになる」等とはほど遠い。

その他、話された大事なポイント
☆権利とは「自分が自分の主人公である」という認識。
☆教職課程や臨床心理士の課程の中の必須科目に「児童福祉」がないことが、学校現場やスクールカウンセラー・相談室に様々な課題を残している。
☆生存権・発達権の上で妨害的に作用するものは排除する義務が大人にはある。
☆問題が出てきたときは、それをバネに新たな仕組みを開拓するチャンスである。
☆子ども自身が意見を聞いてもらえると思っていないし、子どもの権利条約なんて机上の空論としらけている。意見や思いを聞いてもらえた体験のある子どもをたくさんにしてゆくしかない。
☆厚生労働省の中で、「雇用均等・児童家庭局」とまとめられてしまっていたものがやっと「子ども家庭局」が独立するという情報がある。「子ども家庭省」になるまで推し進めよう。

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